
日暮里駅を降りると、都内とは思えないほど静かで穏やかな時間が流れている。そんな街・谷中に、「まちやどhanare」はある。しかし、その名前の建物は存在しない。通常のホテルは、一つの建物の中に宿泊、食事、入浴、娯楽などの機能をあわせもつものが一般的である。しかし、今回紹介する施設は、そのような従来のスタイルとは正反対の特徴を持っている。単に一つの建物に完結したホテルではなく、まち全体を一つの大きなホテルに見立てることで地域と一体になったホテルだ。

まちやどhanareのコンセプトもこれを表している。コンセプトは「The whole town can be your hotel」。そこには谷中というまち全体をホテルのように見立てて過ごしてほしい、という思いが込められている。このコンセプトはロゴにも表れている。レセプションの機能を持つ建物である「最小文化複合施設HAGISO」を中心として、谷中という街の中にお客様の滞在のキーポイントになる場所が広がっており、それらは互いにつながりあっている、ということをたくみに表現しているのだ。

まちやどhanareでの滞在の魅力は、そのまちの魅力を自分の力で発見し、体験することにある。そのため、チェックインの際にはコンシェルジュの説明とともに、スタッフの方々が作成した谷中のまちのマップを配布している。このマップのポイントは、表面と裏面で「デイマップ」と「ナイトマップ」に分けられているところだ。まちの中にあるレストランや居酒屋、文化体験ができる施設などは昼夜で営業時間が異なったり、おすすめしたい時間帯が異なることがある。昼夜分かれているのはお客様にまち歩きを満喫してほしいからこその工夫である。また、コンシェルジュにおすすめを直接聞いてみると、マップにも載っていないまち歩きに関する情報を聞くことができるかもしれない。

また、まちやどhanareには、「あたりまえ」に日常にあるものに価値を与え、「特別」に感じられるような体験がたくさんある。
一つ目は、HAGISOの一階にある「HAGI CAFE」で提供される朝食だ。この朝食のテーマは、「旅する朝食」。実際にスタッフの方々が日本各地を旅して、旅の中で出会った人や食材を見つけ、その体験をそのまま朝食で再現しているという。谷中にいながら日本の色んな地域、体験を想像しながら朝食を楽しむことができる。半年に一回程のペースで旅する地域が変わるのだそう。あらゆる地域を旅した気分になることができ、何度も足を運びたくなる。

二つ目は、客室に用意されている「アメニティ重箱」の存在だ。客室にはバスタオルやシャンプーなどのアメニティが置かれているのだが、それとは別に、お菓子や日記、鉛筆などのアメニティを二段に分かれた重箱に入れて客室に設置している。これは「当たり前のものが特別に見える」というhanareのコンセプトをアメニティに落とし込んだもので、普通のアメニティでも机にそのまま置くのではなく、特別感のある宝箱のように置くことでお客様のワクワク感や受け取り方は変わってくる。hanareに宿泊し谷中のまちを満喫すると、つい日記を書きたくなることだろう。

客室のすりガラスも魅力的だ。このすりガラスは、宿泊棟が最初に建った時からあるものをそのまま利用しており、部屋ごとに違う柄を楽しむことができる。部屋の名前もこのすりガラスの柄に由来しており、宿泊した際には、自分の部屋に特別感、愛着が湧いてくるのではないだろうか。
インタビューにご協力してくださったスタッフの方におすすめの過ごし方を尋ねたところ、おすすめの過ごし方はその人次第だという。そこには、「当たり前に溶け込んでいるものにその人の視点で美しさを見出してほしい」という気持ちが込められており、スタッフの方々も、まち歩きに関してあまり詳細な情報を与えすぎないように心掛けているそうだ。同じ時間を過ごしていても、まちやどhanareでの滞在で得られる感動や思い出は、人それぞれかもしれない。
いかがだっただろうか。是非自らの足でまちを歩き、自分だけの「あたりまえ」で「特別」な魅力を探していただきたい。
改めまして、今回取材にご協力いただいた「まちやどhanare」のみなさん、誠にありがとうございました。
(取材日:2024年11月29日)
施設概要
住所:〒110ー0001 東京都台東区谷中3丁目10ー25
アクセス:JR線、京成本線日暮里駅より徒歩約5分
東京メトロ千代田線 千駄木駅より徒歩約5分
チェックイン:15:30~20:00
チェックアウト:11:00
1名1室 15,000円~
2名1室 20,000円~
3名1室 31,000円~
公式サイト:https://hagiso.com/hanare/
※本記事で使用している写真は「まちやどhanare」様より許可を取って使用しています。